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プール監視員の道
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ふじみ野市プール吸水口死亡事故の概要

 平成18年(2006年) 埼玉県ふじみ野市大井プールにおいて発生した、小学2年生女児が流水プール吸水口より吸い込まれ死亡した事故。
 事故に至る経緯について、プール監視員の教育・指導。施設の構造。管理業者の安全管理。行政(市教育委員会)の委託業者に対する指導管理。受託業者の業務不履行など様々なずさんな管理など事故に関する概要です。
<ふじみ野市プール吸水口事故の概要
 本件の事故では、プール監視員に対して適切な教育・指導を実施しておらず、また施設の安全構造に問題があった。また、施設管理において吸水口の防護柵が固定されていなかった。市から委託を受けた受託事業者は無断で下請けに丸投げし、指導監督していなかった。また、施設管理者である市教育委員会は、安全点検作業を行わず、適正な業務履行に関する監督検査、及び履行確認を行っていない。これらずさんな管理が積み重なり、小学2年生の女児が吸水口吸い込まれる死亡事故が発生した。

<事故発生状況>
・発生日時
 平成18年7月31日13時40分ごろ
・発生場所
 埼玉県ふじみ野市大井プール
・プールの概要
 流水プール 全長120メートル、幅5.5メートル、水深1.00m、面積565.67u
・監視体制
 施設全体、現場責任者1名、アルバイト監視員13名、看護師1名
・発生時の状況
 営業時間中、プールの吸水口の柵が外れ、補修までの間に口頭により吸水口に近づかないよう注意を行う中で発生した。
・溺水者
 7歳 小学2年生の女児
・容体等
 救助活動は難航し、救出のためプールサイドを重機で掘り返すなど、事故発生から病院搬送まで約6時間を要した。
 死亡原因は、窒息等による溺死ではなく、吸水口に急なスピードで吸い込まれ、水路壁に強く頭を打ち付けられたことによる脳幹損傷による即死であった。

<事故に至った問題点等の背景>
プール監視業務に関すること
・プール監視員に対する教育不足
 プール監視に関する適切な研修等を行っておらず、吸水口の危険性と防護柵の役割を把握していなかった。このため、脱落した防護柵を遊泳者から監視員に届けられてが、受け取った監視員は何の柵であるか直ちに判断することが出来なかった。

・現場管理責任者の知識、認識の欠如
 吸水口の防護柵が外れていることを認識した際、監視員に対して遊泳者への注意喚起の指示に留まり、自らは防護柵の再取付のため針金を取りに行っていたのみで、その他の措置を講じなかった。また、開業前の施設点検において防護柵の取付についてねじの代用として針金が使用されていたが、点検管理を継続的に繰り返すのみであった。
 このような結果から、現場管理責任者の知識は、経験や危険認識が欠如していた。

・事案発生時における措置対応の不足
 事故発生前に防護柵が外れている事実を認識し、大変危険な状況であるにも関わらず、遊泳者を直ちにプールから上げる。吸水ポンプ(起流ポンプ)を緊急停止するなどの措置を講じる。または、その必要性を認識していなかった。
・防護柵固定の強度不足
 重要な安全対策である吸水口の防護柵が本来のボルト止めではなく、針金止が常態化し、プール監視員はその危険性を認識していないため見過ごされていた。

管理運営に関すること
・市より管理委託を受けていた委託業者は下請け業者に丸投げしていた。また、市と委託業者ともに下請け業者に対して適切な指導監督を怠った。
・吸水口の安全構造上の問題
 平成14年の通知された基準では、
 「排(吸)水口は、二重構造とし、一重目として排(吸)水口は、 堅固な金網や格子鉄蓋等を設けてネジ、ボルト等で固定させるとともに、二重目としてその先の配管口は金具等(吸い込み防止金具)を設置すること」と明記されていた。
 しかし、配管口は金具等(吸い込み防止金具)が設置されておらず、通知後も必要な改修工事が行われず、構造上の問題が放置されていた。

<問題となった防護柵の固定状況>
吸い込まれた吸水口の2枚の防護柵
・1枚目 四隅すべてをボルトで固定
・外れた1枚 すべて針金固定で代用
 固定していた針金は直径1・8ミリ。塩化ビニールのコーティングがされていたが、さびて千切れていた。

ほかの2か所の吸水口の4枚の防護柵
・1枚目 四隅とも針金固定で代用
・2枚目 2か所がボルトと針金固定で代用され、残り2か所は何もなし
・3枚目 3か所が針金固定で代用され、1か所は何もなし
・4枚目 1か所がボルトで固定され、ほかは針金固定で代用
 代用に使用した針金の中にも、さびて劣化しているものもあった

<事故後の経過>
・2006年11月15日 業務上過失致死罪の容疑で6名を書類送検
 ふじみ野市職員:体育課長、同管理係長、同課管 理係主事補
 太陽管財(株)社長、(株)京明プランニング社長、(株)京明プランニング現場責任者
・2007年6月8日 業務上過失致死罪で2名を在宅起訴
 ふじみ野市職員:体育課長、同管理係長
・書類送検されたが起訴猶予処分となった4名
 ふじみ野市職員:体育課主事補
 太陽管財(株)社長、(株)京明プランニング社長、(株)京明プランニング現場責任者
・2008年5月27日 さいたま地方裁判所 判決
 ふじみ野市職員:体育課長 禁固1年6月 執行猶予3年
 ふじみ野市職員:同課係長 禁固1年 執行猶予3年 控訴後に判決が確定
・2009年4月9日 検察審査会が起訴相当と議決。3名を略式起訴
 太陽管財(株)社長、(株)京明プランニング社長、(株)京明プランニング現場責任者
・2010年3月26日 さいたま地方検察庁
 (株)京明プランニング社長、(株)京明プランニング現場責任者 100万円の罰金刑
民事
・2007年3月24日 被害女児の両親と、ふじみ野市・太陽管財(株)間で損害賠償に関して約6000万円で示談成立。
 (株)京明プランニングとの示談は成立せず、損害賠償請求は継続。

 事故に関する裁判判決等に詳しくは、ふじみ野市プール女児死亡事故の判決

公式な事故報告書等については、
外部リンク:ふじみ野市 > カテゴリ > 分野 > 市政情報 > 大井プール事故
ふじみ野市大井プール事故に関する報告書−検証と対策−
http://www.city.fujimino.
saitama.jp/doc/
2014110400313/

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